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パーキンソン病と運動療法

薬物療法から運動療法へ


薬物療法から運動療法へ


神経伝達物質「ドーパミン」の不足によって、様々な運動障害が現れる。その症状をパーキンソン病とよんでいる。

 
パーキンソン病の説明図

パーキンソン病の直接的原因は、脳幹(中脳)にあるドーパミンを分泌する神経核の黒質が変性し、死滅するために起きることがわかっており、どうして、黒質が変性するのかはわかってはいない。
神経伝達物質の中で、脳からの指令を全身の神経に伝えて筋肉を動かす神経伝達物質は、ドーパミンとアセチルコリンの2つです。
 
筋肉の緊張を指令・伝達するのがアセチルコリンで、この分泌量が多くなりすぎると筋肉の緊張が強くなりすぎてしまいます。筋肉の緊張を緩めるのがドーパミンです。この2つのバランスが取れることで筋肉をスムーズに動かすことができます。ドーパミンはアセチルコリンを抑制する働きがあるので、ドーパミンが不足するとアセチルコリンの作用が過剰ななり、その結果パーキンソン病特有の症状が出ると考えられている。
 
ドーパミンの作用は、運動機能の調節、認知機能の調節、動機づけ、快感を生み出し、脳の機能を活発化させ、意欲的な活動を実現するための重要な役割を補っている。
ドーパミンの働きが十分でなくなると、運動機能の調節が上手くできず、体がこわばったり手や足が震えたりする。また、記憶力が低下し、注意力も散漫になり反応が鈍くなる。意欲を失い、人と関わろうとしなくなることがわかっている。
 
アセチルコリンは、神経伝達物質として働き、アセチルコリンが減少すると「アルツハイマー認知症」になり、逆に過剰になると「パーキンソン病」になるといわれている。 

パーキンソン病と正常なドーパミンの図
 

●正常な脳の働き
正常な脳は、神経伝達物質ドーパミンを介して、線条体へ情報を伝えることで円滑な運動の制御を行っている。ドーパミンは、黒質の神経細胞で作られる。
 
●パーキンソン病の場合
パーキンソン病で黒質の神経細胞が変性すると。ドーパミンの分量が減り運動の指令がうまく伝わってならなくなるため、様々な運動障害が現れる。
 
パーキンソン病の治療の基本は薬物療法で、L-ドーパ製剤という薬が多く使われます。これはドーパミンの原料となり、脳内のドーパミンを補う薬です。アセチルコリンとドーパミンのバランスが取れて症状を緩和することができます。ただし、薬である以上、副作用もあり、何年かたつと薬の効果が弱まっていきます。薬の量を増やす、薬の種類を変えるなどの対応が必要になります。 

運動療法の難しさ

運動療法の難しさは、ただ飲むだけの薬物療法とは違い、運動は自身が自分の意志で行わなければならないことです。自宅で「自助努力を継続」していかなければなりません。誰もが、運動が健康に良いことは理解していることだと思いますが、運動を習慣にするのは簡単ではないという人も多いものです。では、定期的な運動を習慣化するにはどうすれば良いのでしょう?

運動を習慣にするために大切なことは、「無理をしないことです。」

最初は、外出するということから始めたらどうでしょう?つまり「歩く」ということです。週3回、好きな音楽を聴きながら散歩する。朝起きたらまずはラジオ体操をする。または、10回スクワットをするとか、負荷の少ないストレッチ運動から始めることも良いかも知れません。小さな目標を立てて一つずつクリアしていくことが大事です。自分の中で、「運動」=「苦しい」という設定にしないように気をつける必要があります。 自分の中での設定を、「運動」=「楽しい・気持ちいい」、「身体に良い」にしていくことが大切です。
 
健常者の体調管理やコンディション調整といったものには、人それぞれその人に合ったやり方があると思いますが、「パーキンソン病の為の運動」ですから、治療という概念で考える必要があります。その為には、パーキンソン病の症状に効果的がある運動でなくてはなりません。次に運動に対しひとつのヒントになる言葉があります。
 
「ヨガのポーズ、空手の形といったように、自らの動きを意識させる運動は脳に良い刺激になります。また、複雑な動きをし、普段使わない筋肉を意識的に使うことも有効でしょう」ジョンJ.レイティ氏談)

このように、普段の運動とは違うアプローチで身体を動かす。超スローで筋肉を動かす、同時にいくつかの動きを組み合わせて動く、頭で考えて正確に動くなど、脳に刺激のある動きが有効だと考えられます。太極拳がパーキンソン病に良い効果があると聞くのも納得がいきます。
運動を続けるためのモチベーションを維持するためには、運動「しなければならない」とか「やらされている」という意識を変えることが必要です。また、万歩計などを利用して数値化し、少し頑張れば可能な目標値を設定します。日々楽しみながら目標をクリアすることでモチベーションを維持します。さらに「動ける」、「動けるようになった」などの変化を注意深く観察し、その効果を感じることができれば運動を習慣化することが出来ます。
 
「ある意味、運動は夢のような治療法といえます。副作用はなく副次的効果も期待できる。ノンリスク・ハイリターンの治療です。」


「パーキンソン病少しずつ減薬すれば良くなる!」

 
パーキンソン病や認知症などに対して不適切に多剤併用されたおかしな薬物処方が行われている現状を深刻な問題として捉え、可能な限り「減薬」することを念頭において診療にあたっている医師の中坂義邦さん(新横浜フォレストクリニック院長、日本神経学会認定専門医、医学博士)が出版された「パーキンソン病少しずつ減薬すれば良くなる!」の書籍から一部を転載させていただきました(許可をいただき感謝です!)。

→患者さんにとって適切でない薬の服用や、過剰で何種類もの薬の服用によって、副作用により病状が重くなったり新たな症状が現れたりすることがあります。「正しい薬物治療」を見つけるのが難しい病気です。
→どれだけの医療関係者、特に医師と薬剤師が薬物と薬理学というものを正しく理解しているのだろうか、と私は疑わずにはいられません。
→薬はすべての人体にとって異物であり、ときに毒物でもあるという意識が必要ではないでしょうか。治療において用いる薬の種類は一つでも少ない方が良く、より少ない量で効果が得られるのが理想です。
→薬で副作用が出たとしても、多くのケースでは副作用を出している原因薬を中止しようという選択はされず、副作用を薬で打ち消そうとする判断がされます。
→患者さんと薬の相性は千差万別であり、効果や副作用は予想不可能です。わずか数分程度しか患者を観察できない外科医にできるはずもなく、患者さんや同居家族(介護者)が主導でそれを判断すべきです。薬の評価については、患者さん自身、配偶者や同居家族の判断こそが最も信頼できるのではないでしょうか?

 

 L-ドーパ製剤がパーキンソン病を難治化させる。
L-ドーパを飲むと一瞬にして体内のドーパミンの量が上昇し、交感神経が緊張することになります。L-ドーパによるドーパミンの上昇は脳だけではなく体全体に影響が及びます。こうして自律神経に注目すれば、パーキンソン病と診断された患者さんが治療すると急に悪化して、副作用といわれる病状に悩まされます。
自律神経は交感神経と副交感神経をバランスよく働かせることが重要であって、いつまでも薬を使って強制的に交感神経を刺激し続けていると、やがては体は消耗し疲労してしまいます。
その結果、ドーパミンに対する反応も鈍くなるため薬を飲んでも元気は出ず、気持ちも沈んで活発な行動が起こせなくなり、次第に病状自体も抑えられなくなって破綻をきたしてしまうのです。