パーキンソン病の運動療法とは
パーキンソン病の運動療法とは
本来「脳」が持っている、「仕組みに働きかけられる運動」こそがパーキンソン病の運動療法ではないかと考えています。
パーキンソン病の主な症状は、運動機能の障害で、身体の動きがにぶくなり、手足が震える(振戦)ようになる。顔の表情も乏しくなり、話し方が単調になる。歩くときに前かがみになり、バランスがとれなくて転倒してしまうなど、二次的障害も出やすくなります。これらの障害を「改善・予防」するために、体力維持のための有酸素運動や筋肉と関節の柔軟性維持のためのストレッチ運動など、筋力トレーニングを行ったりすることで、日常生活の活動性を高めることができます。
これらの、有酸素運動や筋トレは、症状を緩和するためのものであり、僕が考えるパーキンソン病の「運動療法」とは少し違うなと感じていました。
パーキンソン病の原因は、医学的にはドーパミンが不足することで起こるとされています。脳の衰えに関係していていることは確かです。
つまり、「脳を回復させる運動」こそが有効な運動ではないかと考えています。
運動の指令を筋肉に届ける「脳の仕組み」はこうです。
日常の生活の中で、自然に骨格筋を動かして、歩いたり、しゃべったり、食事をしたりしていますが、脳からの指令を運動神経が忠実に実行することで、歩いたり、走ったりできるのです。実際の動きだけを見れば足を交互に動かしている単純な行為に過ぎませんが、こうした動きの背後には、神経ネットワークの存在があるわけです。
例えば、デコボコの道を歩くためには、眼などの感覚器で歩くための場所や状況を確かめなければなりません。ただ闇雲に足を動かしたのでは、転んでしまうからです。この視覚情報は、感覚神経により脳に伝えられます。感覚神経から情報を得た脳は、これくらいの歩幅で、膝の高さや角度はこのくらいで、足を前に出せば、安定して歩けるという情報を判断し、筋肉に指令を出します。運動神経がこれらの情報を忠実に実行することで、状況に適した歩き方が出来るのです。このように、人間の体には神経のネットワークが張り巡らされています。
身体の感覚器官から得た情報を脳に送るルートを感覚神経といい、
脳から身体を動かすように筋肉に命令を送るルートを運動神経といっています。
有酸素運動や筋肉運動は、症状を緩和するためのリハビリ運動としては有効であり、けして否定するものではありませんが、本来「脳」が持っている、「脳の仕組みに働きかけられる運動」こそがパーキンソン病の運動療法ではないかと考えています。脳に損傷を受けて歩けなくなってしまったら、「残った脳の神経ルートを通って、損傷前とは違う脳の使い方で歩けるようになればよい」と考えるのです。
パーキンソン病の運動療法では、「脳」の機能を応用して、脳細胞に刺激をあたえ「新しいネットワーク」で身体を動かします。
脳は筋肉と同じで、「使えば育つし、使わなければ死んでしまう」ことが科学的に証明されているのです。